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2021.01.05

【年賀状制作の裏側】

改めまして、あけましておめでとうございます。

株式会社 北海紙工社は本日より仕事始めです。

本年も何卒よろしくお願いいたします。

こんな事が起こりえるのかという大変な2020年をなんとか乗り越え、おかげさまで小さな工場は細々と事業を継続し、創業90周年を迎える事ができました。
みなさまのご支援とお引き立てのおかげです。本当にありがとうございます。

 

今年は世界中に困難が訪れ、新年を祝う心境になれるのだろうかと、書くべきことを見つけられず一度は年賀状の辞退も考えました。
ですが、特別なことをせねばと肩に力を入れる必要は無く、自分たちの持ち味を見つめ直し、向き合うだけで十分に伝わる、そして感謝と気持ちを伝えることができると気付きをいただきました。

そこで、自分たちの会社の根幹となる工場と、職人が仕事に打ち込む姿に改めてスポットを当てることにしました。

年賀状といえば干支のデザインですが、そこはお年玉付き切手に託しました。

仕様と加工には大袈裟ですがテーマとして再生・持続・挑戦の想いを込めました。

 

・テーマ1:再生

傷ついたものがまた再生できる日が早く訪れるようにと願いを込めて、再生紙を使用することを最初に決めました。
そして、年賀状に通常使用される180kgの紙ではなく、パッケージで使われる厚手の紙を選びたいという希望がありました。その中でも、古紙約70%と、非木材のサトウキビを約30%使用した少し変わった”TKバガス”という紙を選びました。厚さは27kg、洋紙換算で270kgです。

   


異質なものを取り込んで再生された紙の表情は独特の凹凸のある質感と力強い雰囲気があり、テーマにもぴったりです。

 

・テーマ2:持続

昨年、”工場で余った紙”をSNSで発信したところ、予想を超えた反響をいただき様々に素敵な活用をしていただきました。工場に埋もれている廃材などを活用した製品の開発ができれば、僅かでも持続可能な開発に貢献できるのでは?と考え、加工後に余った部材やサンプルの切れ端などを集めて箔押し加工をすることに。

このロール状の金属フィルムが箔です。箔のサイズに合わせて長いロールから切り出すので幅もバラバラ、使用した量も違うので巻の太さもバラバラです。右下の金属片が箔押しの金版で、ロールの幅に「ほ」のロゴが収まるものを探しました。

余った素材なので1種類では全ての加工をまかなえず、結果として印刷7種*箔押し5種=計35パターンの加工の組み合わせが出来上がりました。

加工適性の目安である箔の硬さもバラバラで調整に苦労しましたが、何が届くかお楽しみ、同じ会社様でも違う組み合わせが届くなど、少し楽しくなるような仕掛けが出来上がりました。

 

・テーマ3:挑戦

TKバガスというインク乾きの悪い紙に、インキ盛り量の多い4色掛け合わせの写真を油性オフセットで加工する。
調整が難しく、重なった紙の裏にインキが色移りするリスクがあるので弊社では普段の選択肢に入りません。どこまで調整すればバランスがとれた印刷物になるか試せる良い機会と考え、挑戦することに。

今年は取り組みも加工技術もますます挑戦をしていく年にしてゆかねばなりません。
私たちの本業は印刷のプロである印刷会社様からのご依頼が多く、私たちの元に仕事が来た時点で仕様が確定していることが大半です。なので加工するまで成功するかどうかわからない、というリスキーな状況や試行錯誤は多くありません。

ですが、ありがたいことに最近は直接加工の相談をいただくお客様との商談や打合せ、何よりも挑戦的なプロジェクトが増えてきております。また地元・北海道のみならず全国から色々な仕事の機会をいただく中で、まだ自社で試したことのない加工や、これは難しいと敬遠していた加工への興味が工場の中でも育ってきている大切な時期でもありました。

なので調整の難しい加工を選択することにしました。

パッケージの表面に光沢を与えながら保護し、インキの裏移りや擦れによるトラブルを軽減する水性ニスコーターを引いての加工でしたが、印刷中からインキ盛り量の多い箇所はわずかに裏移りをしてしまいました。


ですが、事前にその度合いが分かっていれば、片面印刷で済むような商品や場合によってはそれも味として選択肢に入るのでは?という可能性を感じることができました。

 

「ザラついたようでしっとりした質感が昔の印刷物みたいで懐かしいな」と社長がつぶやいていたのが印象的でした。

印刷の仕上がりは普段あまり見ることのない、紙の表情と質感が反映された面白い雰囲気のまま印刷ができました。

質感の好き嫌い、裏移りの可否など判断が分かれる部分ですが、良いサンプルとなりました。

試しに印刷紙器でよく使うコートボール紙、その裏面のネズミ色の部分にも印刷を試してみました。

左からコートボール紙、コートボール紙裏(ネズミ色)、TKバガス。発色、インキの乗りなどに違いが出てきます。

 

コートボール紙では問題なく綺麗に印刷されましたが、今回は「”TKバガス”に印刷して新しい発見をする」という挑戦ができたので、良い収穫となりました。

 

 

そうして生み出された北海紙工社2021年の年賀状。
いつもの仕事であれば中々できない裏側の部分もお話ししてみましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?

今年は加工をはじめ色々な挑戦をしていく中で、不慣れながらもこうした発信に力を入れてゆきたいと思います。
昨年まではなかなか手が回らないでおりましたが、改めて今まで関わらせていただいた制作事例とその物語たちも少しづつ増やしていくことが今年の目標です。
ゆっくり着実に手をつけていきたいと思いますので、ぜひ温かい目で見守っていただければ幸いです。

最後に、他愛のない雑談から真剣に考え、素敵なヒントをくれたgrow design 石黒様ありがとうございました!

企画からディレクションまでできるデザイナーさんの手腕に助けていただきました。

まだまだ大変な状況は続きそうですが、オンライン会議やSNSなど新しい出会いの形も存分に活用しながら、今年もたくさんの人と出会い、話をして、色々な発見を大切にし、気付きを育てて、新しい挑戦をしていきたいと思います。

そして、

印刷×紙工の技術で北海道(そして、日本全国)の「つくる」を特別なものにする。

という株式会社 北海紙工社のテーマと一層向き合い、みなさまのご商売や「ものづくり」のお手伝いをしていければと思います。

本年も何卒よろしくお願いいたします。

 

 

 

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